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愛と感情を謳い続けた色彩の魔術師 マルク・シャガールのまとめ

二十世紀を代表する画家、”色彩の魔術師”と呼ばれるマルク・シャガール。
ロシア出身で色彩豊かな絵画の裏にある、彼の美の女神となった3人の女性についてご紹介します。

二十世紀を代表する画家の一人であり”色彩の魔術師”と呼ばれるマルク・シャガール
彼は生涯、旧約聖書にインスピレーションを受け、その絵の中に人類の普遍的な愛を、そしてまた妻への愛の賛歌を謳い続けました。

シャガールの出生、旧約聖書とのつながり


マルク・シャガールは、ロシア(現べラルーシ)で生まれユダヤ人社会で育ちました。
「旧約聖書」はその社会で唯一の聖典であり、常に生活の規範とされていました。
更に聖書は、シャガールに一生を通じて画家としてのインスピレーションを与え続けました。
1951年には新生イスラエルの首都エルサレムで個展開催、4年後には聖書を題材とした連作に取り組みます。
その連作「雅歌(がか)」は画家晩年の代表作となりました。

愛を描くシャガール 3つの特徴と魅力


シャガールの絵の中には多くの特徴や魅力がありますが、ここではその中でも特に次の3点を挙げてみたいと思います。

1.色彩の美しさ
シャガールの絵で非常に特徴的なのは、まずその色彩。
シャガールは「色彩の魔術師」とも呼ばれています。サンクトペテルブルク時代の師バクストは「君の絵は色彩が歌っている」と感嘆したと言います。

2.幻想的な世界

シャガールは、キュビズムに強く影響を受け構図を大胆に分割する手法を学びます。
シャガールの描く絵の中では、道端を逆さまに歩く人がいたり、花の中に愛し合う恋人たちがいたりします。
夢の中にいるかのような、不思議で幻想的な世界がシャガールの絵の魅力の1つです。

3.旧約聖書からモチーフを得て描く
彼の作品はその殆どが旧約聖書からモチーフを得、描かれています。
絵のタイトルからも、「楽園」「楽園を追放されるアダムとイブ」「アブラハムと3人の天使」「犠牲の場所に向かうアブラハムとイサク」「イサクの犠牲」「ヤコブの夢」「天使と闘うヤコブ」など、殆どが旧約聖書の中の世界を描いている事が分かります。

シャガールと愛の女神(ミューズ)たち


シャガールの絵の中では、恋人たちが愛し合う様子が多く描かれています。
特に、初期の頃から「結婚」「婚礼」をテーマにした絵が多く描かれました。

シャガールの絵の中には、妻ベラが非常に多く登場します。ベラへの愛を表現したものがたくさんあります。
シャガールと人生を共に長く歩んだ相手として有名なのがベラ(ベラ・ローゼンフェルト)です。
しかしシャガールの人生の中で、ベラの後にも2人の妻がいました。
ここでは、シャガールを支えた3人の愛の女神(ミューズ)たちについて、見ていきたいと思います。

1.シャガールの愛の人生

1909 8歳年下のベラ・ローゼンフェルトと出会う(シャガール22歳)
1915 ベラと結婚(シャガール28歳)翌年、娘イダが誕生
1944 妻ベラが他界(シャガール57歳)
   ベラの死後、英国人女性ヴァージニア・ハガードと恋に落ちる(後に二人
   の子供たちをもうける)
1952 ヴァージニアとの別れ(シャガール66歳)
   ヴァヴァ(ヴァレンティーナ)と出会う。
   ヴァージニアとの別れの4か月後、ヴァヴァと再婚

2.シャガールの愛の女神(ミューズ)たち

①ベラ・ローゼンフェルト
シャガールとずっと連れ添った妻ベラ。いつも辛抱強くシャガールを支え励まし、シャガールの絵の中には何度も登場しました。

②ヴァージニア・ハガード
妻ベラに先立たれ、孤独な頃のシャガールとヴァージニアは出会いました。ヴァージニアの愛を得て、シャガールは制作意欲を取り戻します。絵に没頭することができるようになり、次第に富と名声を得ていきます。
ベラやヴァヴァに比べ、ヴァージニアはあまり有名ではありませんが、ヴァージニアによる「シャガールとの日々 語られなかった7年間」の本の中で、シャガールとの生活について書かれています。

③ヴァレンティーナ(愛称ヴァヴァ)
ヴァージニアとの別れの後、シャガールは40歳くらいの女性ヴァヴァと出会います。最初はシャガールの秘書として知り合った彼女でしたが、数か月後には、シャガールにとって、なくてはならない存在となります。
落ち着いた大人の女性として、晩年のシャガールを支え続けました。

一生涯を通じ、聖書の普遍的な愛を、また妻たちへの愛を、いつでも愛の賛歌を謳い続けたシャガール。
彼の絵の中には、今の時代もなお共通する愛の世界が描かれているのかもしれません。

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