春夏秋冬を描いた不思議な絵 アルチンボルド展の魅力を紹介
パリのルーヴル美術館を訪れた人に「最も印象に残った作品は?」という質問をしたところ、一位はもちろんレオナルド・ダ・ヴィンチ作「モナリザ」。
意外にも二位はアルチンボルドが描いた「四季」だったそうです。
そこで国立西洋美術館で開催される「アルチンボルド展」に出品される、「四季」をご紹介します。
パリのルーヴル美術館を訪れた人に「最も印象に残った作品は?」という質問をしたところ、一位はもちろんレオナルド・ダ・ヴィンチ作「モナリザ」。
意外にも二位はアルチンボルドが描いた「四季」だったそうです。
不思議な魅力に惹きつけられる、アルチンボルドの「四季」をご紹介します。
アルチンボルドが描いた「四季」「四大元素」はヨーロッパ外交の贈り物に
故郷のミラノからウィーンに招かれたアルチンボルドが、翌年から描き始めたのが、四季の果物や野菜を縦横無尽に配した人物像。
この一連の作品、初期の作品はミラノ時代の固い線が残っています。
しかし抜群の写実力、想像力、構築力があったアルチンボルドは、次々に新たな作品を制作し、ハプスブルク家の皇帝の寵愛は深まるばかりでした。
アルチンボルドの作品は、欧州外交の贈り物としても使用されるようになったのです。アルチンボルドは要請に応え、これらの作品のコピーを何枚か描いています。
彼の写実力は、イタリアではレオナルド・ダ・ヴィンチとカラヴァッジョの線をつなぐ存在とされ、高く評価されています。
ヨーロッパにもたらされたばかりの「トウモロコシ」も登場する《夏》
国立西洋美術館で開催される「アルチンボルド展」にも登場する《夏》を見てみましょう。
ニンニク、梨、サクランボ、葡萄、プラム、なす、キュウリなど夏の食材が写実的に描かれています。「トウモロコシ」に「耳」に見立て、アーティチョークがコサージュのように胸元を飾っているのがご愛敬です。衣服は小麦の穂を編み込んだものになっていますが、注目は襟の部分。藁に編み込む形で「GIUSEPPE ARCINBOLDO(ジュゼッペ・アルチンボルド)」の署名が残されているのです。
《冬》の唯一の彩り「レモン」はイタリアからの輸入品
荒涼とした枯れ木による構図は、オーストリアの厳しい冬を思い起こさせます。
オーストリアの冬でも、唯一葉を落とさない「蔦」が髪の毛としてあしらわれています。唇はキノコ。そして、寒々とした《冬》に唯一の彩りをレモンが印象的な作品です。
植物80種が描かれた「春」
明るい色彩で描かれた《春》。ここには80種の植物が描かれています。顔はバラの花びらで覆われ、髪の毛は色とりどりのブーケのようです。目は、「ベラドンナ」と呼ばれる植物の実とオダマキの花で、襟はマーガレットの花が重なり、衣服は春の緑の葉で構成されています。
この作品は植物学者たちによっても調査され、アヤメ科の植物が多く描かれていることが判明しています。
自由な筆遣いが特徴の《秋》
《秋》になると、アルチンボルドの筆はなめらかに動いており、《春》と同じように左向きに描かれた人物は、いかにも庶民という雰囲気です。顔を形成する梨やリンゴには、虫食いのあとが見えたり、頭部のカボチャにはカタツムリがはっていたりと遊び心もあふれています。口は栗、耳はキノコ、あごはザクロ、とまさに豊穣の秋を感じさせる色彩になっています。
二代のウィーン皇帝に愛されたアルチンボルド
彼の画才と博識を愛したマクシミリアン二世が1576年に亡くなると、アルチンボルドはその息子のルドルフ二世にも仕えるようになります。ルドルフ二世は宮廷をプラハに移しますが、アルチンボルドも随行し、収集癖があったルドルフ二世の相談役として常にそばにありました。
晩年は故郷ミラノに戻ったアルチンボルドを終生愛したルドルフ二世は、彼を貴族に列しています。
アルチンボルドの作品は、美術史上でも他に類を見ない特異なもので、後世の画家たちにも大きな影響を与えてきました。さまざまな野菜や果物、科学の要素、動物や書籍を組み合わせて作り出された人物像には、えもいわれぬユーモアも漂います。
アルチンボルド展
会 期 2017年6月20日(火)~9月24日(日)
会 場 国立西洋美術館(東京・上野公園)
休館日 月曜日、7月18日(火)
(ただし7月17日(月)、8月14日(月)、9月18日(月)は開館)
開館時間 午前9時30分~午後5時30分(金・土曜日は午後8時まで)
アルチンボルド展公式サイト(http://arcimboldo2017.jp/)
国立西洋美術館 公式サイト(http://www.nmwa.go.jp/)
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