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ボッティチェリの「ヴィーナス誕生」にまつわるちょっと怖い話

フィレンツェのウフィッツィ美術館の超人気作品といえばボッティチェッリの「ヴィーナス誕生」。
ボッティチェリの「春」と並んで、ルネッサンス期のフィレンツェ共和国を代表する名作です。
この名画にこめられた画家の思いについて、少し怖いエピソードをご紹介します。

フィレンツェのウフィッツィ美術館の超人気作品といえばボッティチェッリの「ヴィーナス誕生」
ボッティチェリの「春」と並んで、ルネッサンス期のフィレンツェ共和国を代表する名作です。
この名画にこめられた画家の思いについて、少し怖いエピソードをご紹介します。

ギリシア神話の愛と美の女神ヴィーナス

サンドロ・ボッティチェッリ《ヴィーナスの誕生》1485年頃、ウフィツィ美術館 Sandro Botticelli [Public domain], via Wikimedia Commons


生まれたばかりの全裸のヴィーナス神が、真珠貝の上に乗って、大地に上陸するシーンを描いたボッティチェリの代表作「ヴィーナス誕生」。

愛と美をつかさどる女神、ヴィーナス神の物語は、神々の最初の王である天の神が、自分の子供たちを醜いという理由で幽閉するところから始まります。
これに怒った妻である大地の女神と息子が共謀して父親の生殖器を切り落とし、父から王権を奪い取ります。

父親から誕生したヴィーナス

そしてこの時に、海に落ちた天の神の精子と海水が交わってできた泡から生まれたのが、愛と美の女神ヴィーナスです。
兄による父親殺しによって、海の中から誕生したばかりの女神は、よく見ると愁いを含んだような表情をしています。

ヴィーナスのモデルは絶世の美女シモネッタ

サンドロ・ボッティチェッリ 《ボッティチェッリの描いたシモネッタ》[Public domain or Public domain], via Wikimedia Commons


ボッティチェッリがヴィーナスのモデルに選んだのは、当時フィレンツェで絶世の美女として有名だったシモネッタ ヴェスプッチ。
ジェノヴァの貴族の娘で、15歳の時に親の決めたフィレンツェの銀行家の元へ嫁いできました。アメリカ大陸を発見したアメリーゴ  ヴェスプッチの遠縁にあたる有力な一族です。

メディチ家の貴公子との許されぬ恋と死

この絶世の美女、人妻シモネッタを見初めたのが、時の権力者メディチ家の若き貴公子ジュリアーノです。
フィレンツェ中が注目する馬上槍試合で、シモネッタを「永遠の恋人」と公言するなど彼女に夢中だったことが、当時の記録に残っています。

ところがシモネッタは、肺結核のために翌年23歳で惜しまれながら早逝。ジュリアーノも兄ロレンツォとともに、メディチ家の権力を狙う「パッツィ家の陰謀」に巻き込まれ、シモネッタの死の翌年、花の聖母マリア大聖堂で、25歳という若さで暗殺されてしまいます。偶然にも、2人の亡くなった日は、同じ4月26日。なんだか因縁めいたものを感じてしまいます。

生涯シモネッタにこだわり続けたボッティチェリ

シモネッタの死の9年後、「ヴィーナス誕生」のモデルとして亡き人妻を美しく描いたボッティチェリ。
近年の修復作業で、ヴィーナスの髪や体、貝殻などに黄金が使用されていて、きらめくように美しく輝いていたことがわかりました。

この「誕生」のヴィーナスは、同じ画家の描いた「春」の世俗のヴィーナスに対し、天上のヴィーナスと称され、精神愛のシンボルとされています。
生涯独身だったボッティチェリは、この絵の他にも、シモネッタと思われる女性像を描きました。

そして本人の希望通り、ボッティチェリは没後、シモネッタと同じオンニサンティ教会に埋葬されたのです。

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