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イタリア・ローマでアートを楽しむ ボルゲーゼ美術館で絶対見るべき3つの作品

イタリア・ローマのボルゲーゼ美術館は、アート好きの観光客が訪れる人気の美術館。
予約しないと観光できない美術館だから、「外せない作品」は必ず押さえておきたいところ。
イタリア・ローマに訪れたら、絶対に見てほしい3つの作品を現地在住のキュレイターがご紹介します。

イタリア・ローマのボルゲーゼ美術館は予約制。入場者数が限られていますので心ゆくまで数々の名品を堪能することができます。
膨大なコレクションは、のちにナポレオンによってフランスに持ち去られたものもありますが、それでもなお、ベルニーニ、ブロンズィーノ、カラヴァッジョ、ラファエロ、ティツィアーノ、ペルジーノ、ロレンツォ・ロット、アントネッロ・ダ・メッシーナ、クラナハ、ベッリーニなどなど、美術ファンには垂涎の作品の数々を現在も見ることができます。
イタリア・ローマに訪れたら、絶対に見てほしい3つの作品を現地在住のキュレイターがご紹介します。

イタリア・ローマは街を歩けばアートを感じる

イタリア・ローマ


ローマの街を歩いていると、ローマ法王を輩出し栄華を極めた貴族たちの紋章がよく目につきます。
上部に鷲、下部にドラゴンが特徴の美しい紋章で有名なボルゲーゼ家は、法王パウルス五世を輩出した名門でした。
法王の甥っ子枢機卿シピオーネ・ボルゲーゼは大変な美術好きで、その膨大な美術コレクションがボルゲーゼ美術館の母体となっています。

ジャン・ロレンツォ・ベルニーニ作「アポロンとダフネ」

イタリアン・バロックの巨匠ジャン・ロレンツォ・ベルニーニがボルゲーゼ枢機卿の注文を受けて制作した彫刻のひとつです。テーマはギリシャ神話。
美男の神アポロンは河の神の娘ダフネに恋をし彼女を追いかけますが、ダフネは父の神に願って月桂樹になってしまうシーンを描いています。真っ白な大理石は、まるで触れれば血が通っているかと見まごうほどに柔らかな艶があり、一度見たら忘れられなくなる美しさです。
「人間が樹木に変身する」という非常にドラマチックなシーンを見事に表現しています。
彫刻のよいところは、360度から鑑賞が可能なことです。
ベルニーニの作品は、ボルゲーゼ美術館で他にも7点を見ることができます。
いずれの作品でも、髪の毛の一筋、人物の表情、劇的な手足の動き、頬にこぼれる涙など、緊張感にあふれたベルニーニの表現を鑑賞できます。

カラヴァッジョの作品が6点 代表作「果物籠を持つ少年」

カラヴァッジョ『果物籠を持つ少年』(1593年 – 1594年)


シピオーネ・ボルゲーゼは、カラヴァッジョの有力なパトロンの一人。
そのため、ボルゲーゼ美術館はカラヴァッジョの作品を6点も所有しています。
20代前半のカラヴァッジョが、おそらく自身をモデルにして描いたといわれるこの作品に、美術初心者が心惹かれることはまれかもしれません。諸肌脱いだ中性的な男性像は、カラヴァッジョ自身をモデルにしているとも言われていて、うつろな視線、半開きの唇が、なにやら淫蕩ささえ感じる作品です。
しかし、「光と陰の画家」といわれたカラヴァッジョの真髄はすでにこの作品にも見られ、静物画を描かせても一頭地を抜いていた彼の力量をまざまざと感じることができる傑作です。

ラファエロが描いた「一角獣を抱く貴婦人」

ラファエロ「Lady with a Unicorn」(1505年)


この作品は20世紀初頭までは保存状態が悪く、誰の作品であるのか謎のままでした。
1935年に完了した修復により細部が明らかになり、ラファエロの作品と断定された経緯があります。
モデルのポーズから、ラファエロがレオナルド・ダ・ヴィンチが描いた「モナリザ」や「白貂を抱く貴婦人」に強い影響を受けていたことがわかります。
モデルは不明ですが、シンプルでありながら豪華なアクセサリー、美々しい衣装などから、貴族の女性と推測されています。腕に抱く「一角獣」は、当時は「純潔」の象徴でした。伝説では、一角獣は乙女にしかなつかないと言われていたそうです。

修復の赤外線調査で、ラファエロは当初「一角獣」ではなく「貞潔」を表象する子犬を描いていたことが明らかになりました。
「子犬」がなぜ「一角獣」に描きかえられたのか、想像しながら鑑賞するのも楽しいかもしれません。

ボルゲーゼ美術館(イタリア・ローマ)

ボルゲーゼ美術館
住所 Piazzale Scipione Borghese, 5, 00197 Roma
アクセス方法 地下鉄A線スペイン広場駅から徒歩で25分
あるいは116番バス「ボルゲーゼ美術館」下車

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