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ミケランジェロやラファエロの陰に隠れた不運の画家 ロレンツォ・ロットの「受胎告知」

キリスト教会では重要なテーマとされている「受胎告知」。「受胎告知」と聞いて思い出す画家は、やはりレオナルド・ダ・ヴィンチでしょうか。
ルネサンス時代のそうそうたる芸術家の一人、ロレンツォ・ロットの作品「レカナーティの受胎告知」をご紹介します。

キリスト教会では重要なテーマとされている「受胎告知」。
大天使ガブリエルが乙女であったマリアに「あなたは神の子を身ごもっている」と伝えるシーンです。イエス・キリストはこれにより聖母マリアから生まれるのですから、キリスト教会がそのテーマを重要視し、多くの画家たちが作品と描いたのは当然でしょう。

「受胎告知」で有名なレオナルド・ダ・ヴィンチ

「受胎告知」と聞いて思い出す画家は、やはりレオナルド・ダ・ヴィンチでしょうか。
若干二十歳のレオナルドが描いた初々しい「受胎告知」には、清純な聖母マリア、神々しく優美な大天使が描かれています。

レオナルド・ダ・ヴィンチ「受胎告知」

レオナルド・ダ・ヴィンチにかぎらず、ルネサンス時代のそうそうたる芸術家たちの多くが、生涯に一度は「受胎告知」をテーマに作品を残しています。
その一人に、ロレンツォ・ロットという画家がいます。

ロレンツォ・ロット「レカナーティの受胎告知」の魅力

Lorenzo Lotto「レカナーティの受胎告知」

ダヴィンチやカラヴァッジオの「受胎告知」とは異なり、ロレンツォ・ロットは印象的な作品を残しています。
両手を広げて驚きをあらわにする聖母マリア、そして作品の中央に写実的に描かれたかわいらしい猫。
聖母マリアの聖性もなく、猫が重要なシーンで横切るという規則違反ともいえる作品を描いたロットは、人々から隔てられ孤独になっていきます。
当時「猫」を描くのは、「悪魔の象徴」。大天使ガブリエルがあげた腕の先に全能の神がいて、その彼が「悪」の象徴である「猫」を追い払っている。ロットの解釈自体に間違いはないものの、その斬新さを当時の人は受け入れられなかったのでしょう。

ミケランジェロやラファエロと同時代に生まれた不運

ロレンツォ・ロットは残された数々の肖像画や宗教画を見ても、「天才」の名にふさわしい技量の持ち主でした。なぜ、その名があまり知られていないのでしょうか。
死後300年以上も経ってから高い評価を得るようになったロレンツォ・ロット、1480年にヴェネツィアに生まれています。
彼の最大の不運は、その数年後にティツィアーノがヴェネツィアに生を受けたことでした。1556年にロレートの修道院で孤独な死を迎えるまで、彼はヴェネツィアが生んだ巨星ティツィアーノの陰に隠れ続けることになるのです。ティツィアーノだけではありません。
ロレンツォ・ロットの同時代人にはミケランジェロやラファエロがいるのです。

巨匠ティツィアーノとの確執

巨星たちの陰に隠れて、生まれ故郷ヴェネツィアに活躍の場を持てなかったロレンツォ・ロット。
1529年ロットは念願がかない、ヴェネツィアのカルミネ教会に「聖ニコラスの栄光」という作品を描きました。現在ではロットの代表作のひとつといわれるこの作品を見たティツィアーノは、「悪い色づかいの好例だ」とコメントしたのです。
当時の大御所ティツィアーノのこの言は、後世まで影響を残しました。このレッテルは300年も貼られたままでした。
ティツィアーノに最低の評価をされては、ロットのヴェネツィアでの画業は閉ざされたも同然でした。

しかし、現在彼の業績は大きく評価されています。
ロレンツォ・ロットの代表作「レカナーティの受胎告知」はとくにその猫の愛らしさから、イタリア国内外で愛される「受胎告知」となっています。

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