絵師の落書きが国宝に?! アニメやLINEスタンプで人気「鳥獣戯画」の秘密
「鳥獣戯画」は、12世紀ごろ描かれ、京都の高山寺に伝えられてきた絵巻物です。兎や蛙といった動物たちが走り遊び追いかけっこをし相撲を取る姿をユーモラスに描き出し、日本最初の「漫画」であると言われています。日本美術の至宝のひとつとして、老若男女にひろく親しまれてきました。その人気は、なんと「戦国鳥獣戯画」というTVアニメにまでなっていることからもうかがい知れます。
「鳥獣戯画」は、12世紀ごろ描かれ、京都の高山寺に伝えられてきた絵巻物です。兎や蛙といった動物たちが走り遊び追いかけっこをし相撲を取る姿をユーモラスに描き出し、日本最初の「漫画」であると言われています。日本美術の至宝のひとつとして、老若男女にひろく親しまれてきました。その人気は、なんと「戦国鳥獣戯画」というTVアニメにまでなっていることからもうかがい知れます。
鳥獣戯画の作者は?本当に鳥羽僧正なのかという疑問
「鳥獣戯画」の作者は、長いこと「鳥羽僧正」という人であると伝えられてきました。
鳥羽僧正覚猷は、平安時代後期に日本仏教界の重鎮だった高僧。
同時に天才的な絵師であり、笑いと皮肉に満ちた絵を描くファンキーな人物でもありました。
鳥獣戯画は「いかにも鳥羽僧正が描きそうな絵」であったことから、自然に作者ということになってきたのです。京都のお寺に宝物として伝えられていたことも、鳥羽僧正説に説得力を持たせていました。
現在の研究では、どうやら鳥獣戯画の作者は鳥羽僧正ではなく、その手が加わっていたとしても限定的だろうといわれています。
有名な鳥獣戯画は前半の巻だけ?作られた目的は…
鳥獣戯画は、4つの巻物から出来ています。甲巻、乙巻、丙巻、丁巻と呼ばれていますが、実はこの4つの巻は、それぞれ特徴が違います。甲巻は兎、蛙、狐を中心に、見慣れた動物たちが人間っぽく遊ぶ光景を描いた巻です。鳥獣戯画ときいて多くの人が思い浮かべているのは、この甲巻。
乙巻はこれに、象や獅子や麒麟といった、日本では見られない動物や空想上の動物も加わってきます。この乙巻は、絵師たちの動物手本帖だったのではないか、という可能性も指摘されています。
知られざる鳥獣戯画丙巻、丁巻の世界
あまり知られていない「鳥獣戯画」の後半、丙巻と丁巻には人間が出てきます。
とくに丙巻は、動物と人間が半分ずつ登場するという不思議な構成。多くの美術関係者が、「その理由」に悩まされてきました。
しかし近年、京都国立博物館による修復作業の途中、修復担当者が、動物の絵と人物の絵に同じような滲みがあることを発見。詳細に調べたところ、丙巻はもともとは人物と動物が紙の裏表に描かれていたもので、後世になって紙を薄く剥いで絵巻に仕立て直したのだということが判明。大発見でした。
鳥獣戯画は、成り立ちが違う絵の集合体!?
この丙巻にまつわる発見によって、よりはっきり見えてきたことがありました。
つまり、甲乙丙丁の各巻は、もともとの成り立ちもバラバラだったのではないかということです。
描き方があまりに違うことから、そうではないかという声は古くからありましたが、最近の研究によって、その可能性はさらに高まっています。おそらく鳥獣戯画とは、12世紀から13世紀にかけて、複数の絵師たちが描いたいろいろな戯画の集合体なのです。鳥羽僧正という一人の天才が描いたのではなく、歴史に名も残っていない僧侶絵師たちが、こつこつと描いたものだったと思われます。
無名の絵師たちが描いたものだからこそ素晴らしい
作者が鳥羽僧正でないとされることで、鳥獣戯画の価値は下がるのでしょうか?
逆に「価値は上がる」のではないでしょうか。
なぜなら鳥獣戯画というユーモアと皮肉に満ちた絵の世界が一人の超人から生まれたのではないということは、12世紀ごろの日本に、秀逸な笑いの文化と、それを表現する高度な描写技術がひろく定着していたことを示しているからです。
平安後期の絵師たちは、私たちがイメージするよりはるかに笑いのセンスがあり、また落書きが大好きな人たちでした。その絵師たちの落書きに近いような絵を、大事に保管し守ってきた高山寺も、実に文化的度量の大きい素晴らしいお寺だったといえるでしょう。
「鳥獣戯画」は私たちに、ご先祖さまが「人を笑わせることが好きな」洒落(シャレ)がわかる人たちだったと教えてくれる貴重なお宝なのでhないでしょうか。
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