小説家多和田葉子の最新作に登場! ケーテ・コルヴィッツのことがわかるまとめ
ドイツベルリン在住で、芥川龍之介賞も受賞している小説家 多和田葉子。話題の最新作「百年の散歩」はベルリンに実在する通りを題材とした連作長編。作品に登場するコルヴィッツ通りに登場するアーティスト、ケーテ・コルヴィッツについてまとめました。
ドイツベルリン在住で、芥川龍之介賞も受賞している小説家 多和田葉子。
話題の最新作「百年の散歩」はベルリンに実在する通りを題材とした連作長編。作品に登場するコルヴィッツ通りに登場するアーティスト、ケーテ・コルヴィッツの作品を見ることができる場所がベルリン観光の中心地にあります。
ベルリンの観光名所 ノイエ・ヴァッヘとは?
1818年に建設されたノイエ・ヴァッヘは建築家カール・フリードリッヒ・シンケルが設計した衛兵所。
現在はドイツ連邦政府の第一次世界大戦後の戦没者、犠牲者の中央追悼施設となっています。ベルリンの目抜き通りウンター・デン・リンデンにあり、多くの観光客が訪れるスポットでもあります。建物の中に入ると広い空間で目に入る唯一のもの、それがケーテ・コルヴィッツによる、第一次世界大戦で亡くなった彼女の息子ペーターと、息子を抱きかかえる彼女をモデルとした《ピエタ》を拡大した作品です。
ドイツを代表する女性アーティスト ケーテ・コルヴィッツ
ケーテ・コルヴィッツ(1867-1945)はドイツの版画家、彫刻家。
自画像を多く残したこともあり、「女性版レンブラント」と称されることもあります。医師である夫と共に常に貧しい人、苦しんでいる人々への共感の眼差しを忘れず、社会問題を題材とした作品を通して戦い続けた女性です。
2人の息子の母であったこともあり、母親としての、女性としての苦しみや愛情を表現しました。ナチスに「頽廃芸術家」としての烙印を押され、教職を追われ、展覧会を行うことや作品制作すら禁止されるという芸術家としても茨の道を歩みました。
戦争で息子を亡くしたケーテ・コルヴィッツ
コルヴィッツには2人の息子がいました。第一次世界大戦時に「長男には召集令状が来たが、次男はまだ年が若かったので戦争に行かなくても良かった。しかし、
「祖国を守るために出征したい」と言い出し、甘えん坊だった息子がそんなことを言うのでコルヴィッツは頼もしさを感じ、喜びを隠せなかった。」
(引用:多和田葉子「百年の散歩」)
その結果コルヴィッツはまだ18歳という若さであった次男ペーターを1914年に戦死させてしまうのです。
彼女は悲しみに打ちのめされ苦しみますが、苦悩を抱え続けたまま戦争を批判する作品や、死をテーマとした力強い作品を制作し続けます。
戦争を止めるよう訴え続けたコルヴィッツでしたが、第二次世界大戦で孫のペーターも戦死してしまいます。
名作《ピエタ》は戦争の悲惨さを訴える作品
ケーテ・コルヴィッツは母親が死んだ子供を抱きかかえる様子を版画や素描で数多く残しています。彼女が1937/38年に制作した《ピエタ》は約40cmと小さく、年老いた母親が座り込み、膝の間ですでに息を引き取っている我が子を抱え込み、悲しみに沈み込んでいる彫刻作品。ノイエ・ヴァッヘにある《ピエタ》(《母と死んだ息子》というタイトルがつけられている)はそれを約4倍の大きさに拡大したもので1993年に設置されました。
戦争で犠牲になった人々を悼む場所に置かれるにはふさわしく、訪れる人に戦争の悲惨さを静かに訴えかけ、また悲しみを抱く人には共感を示し、癒しともなるような作品となっています。
もっとケーテ・コルヴィッツを知るために…
悲しみや苦しみをテーマとした作品が知られるケーテ・コルヴィッツ、乳児の丸々とした顔や、子供への愛情が溢れるような表情を見せる母親の姿をとらえた、思わず微笑んでしまうような作品も残しています。
ベルリンにはケーテ・コルヴィッツ美術館があり、いつでも彼女の作品を見ることができます。ブロンズ鋳造作品が全て所蔵されているのでタイミングが良ければ《ピエタ》を見ることもできるかもしれません。
ノイエ・ヴァッヘで彼女の作品に心を打たれた方におすすめの美術館です。
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