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映画になった「マグダラのマリア」、公開前に罪深い女の正体をアートで簡単解説

2017年11月に公開予定の映画「マグダラのマリア」。新約聖書の福音書に登場するマグダラのマリアを主人公にした初めての映画です。
マグダラのマリアは、キリスト教世界において聖なるイエスの母マリアに対し、謎めいた罪深い女として描かれてきました。
マグダラのマリアはどういう女性だったのか、ティツィアーノの作品を中心に簡単にご説明いたします。

2017年11月に公開予定の映画「マグダラのマリア」。新約聖書の福音書に登場するマグダラのマリアを主人公にした初めての映画です。
マグダラのマリアは、キリスト教世界において聖なるイエスの母マリアに対し、謎めいた罪深い女として描かれてきました。

マグダラのマリアはどういう女性だったのか、ティツィアーノの作品を中心に簡単にご説明いたします。

「ダヴィンチコード」ではイエスの妻?

大ヒット映画「ダヴィンチコード」で、すっかり日本でも有名になったマグダラのマリア。
イエスはマグダラのマリアと結婚していて、イエスの死後、身ごもっていたマグダラのマリアによって、イエスの子供を後世に伝えていたというスキャンダルなストーリーです。これは中世の黄金伝説に基づいたフィクションですが、マグダラのマリアには、様々な伝説があります。

数多くの画家に愛された聖書のマドンナ

聖書<イメージ>


ルネッサンス期を中心に、ヨーロッパではカラヴァッジョ、ルーベンスをはじめ多くの画家がマグダラのマリアを描きました。特に「悔悛するマグダラのマリア」が画家たちの好んだテーマでした。マグダラのマリアは娼婦だったという伝説に基づいて、教会に香油の壺を持った長い髪の官能的な女性像が多く描かれました。このマグダラのマリアのイメージが、一般の人にも広く定着していきます。

ティツィアーノの2枚のマグダラアのマリア

ティツィアーノ・ヴェチェッリオ『懺悔するマグダラのマリア』 1533年頃 ピッティ宮殿


ルネッサンス期のヴェネツィア派の巨匠テッツィアーノは、特に興味深い2枚の「悔悛するマグダラのマリア」を描きました。
目に涙を浮かべて天を見上げ、手を胸において後悔している長い髪の美しい女性。初期の代表的な作品である1枚目は、長い髪で裸の上半身を隠そうとしているように見せながら、豊かな胸が丸見えの官能的なマグダラのマリア。いかにも娼婦というイメージです。

後期に描かれたもう1枚の絵では、服を着ているので、罪を後悔する聖女のイメージです。

時代の波に翻弄される聖女

1枚目の絵が描かれた1533年は、ローマ法王が王侯貴族のような豪奢な生活を送っていたキリスト教会全盛期。聖女を口実に、女性の肉体美を表現したのです。ところが、30年後に2枚目が描かれたころは、腐敗したカトリック教会に対して宗教改革の嵐が吹き荒れ、教会に裸婦像を飾ることが禁じられたので聖女のように描いたのです。当時は絵の注文主が教会だったので、時代に応じてイメージが異なるのです。

聖書の中のマグダラのマリア

聖書<イメージ>


実際、マグダラのマリアとはどういう女性だったのでしょうか?
聖書の中ではイエスに悪霊を追い払ってもらった女性とだけしか説明されていません。イエスの十字架刑に立ち会い、復活したイエスに出会ったとも記された重要な人物です。ところが、男性中心の初期のキリスト教会は彼女に無実の罪をきせます。

イエスの足を涙で濡らして長い髪でぬぐい、イエスの足に香油を塗って口づけをして罪を許された聖書の中の罪深い女性を、マグダラのマリアと同一人物だと決めつけたのです。

現在、キリスト教会はバチカン公会議でマグダラのマリアに対する「罪深い女」という定義を取り払いました。
今回の映画では、どのようなマグダラのマリアが描かれるのでしょうか?

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