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やっぱり「ミュシャ展」混んでいる? 代表作「スラブ叙事詩」を楽しむ予備知識

装飾的なポスター芸術の巨匠アルフォンス ミュシャが描いた幻の超大作「スラヴ叙事詩」が、全20作揃った展覧会「ミュシャ展」は2017年6月5日まで国立新美術館で開催されています。
大きなもので縦6m、横8mもある壁画級の作品。
全20点の「スラブ叙事詩」の作品すべてが揃ってチェコの国外へ出るのは今回が初めて、という特別な展覧会です。

チェコ国外で「スラブ叙事詩」全作品揃った初の特別展

アルフォンス・ミュシャ 1928 年


装飾的なポスター芸術の巨匠アルフォンス ミュシャが描いた幻の超大作「スラヴ叙事詩」が、全20作揃った展覧会「ミュシャ展」は2017年6月5日まで国立新美術館で開催されています。
大きなもので縦6m、横8mもある壁画級の作品。全20点の「スラブ叙事詩」の作品すべてが揃ってチェコの国外へ出るのは今回が初めて、という特別な展覧会です。

独立や自由の象徴「スラブ叙事詩」

《スラヴ叙事詩「原故郷のスラヴ民族」》 1912 年 プラハ市立美術館 ©Prague City Gallery


「スラヴ叙事詩」はスラブ民族の伝承や神話、歴史をもとに描かれた、スペクタクルな連作です。当時大国の支配に苦しんでいた同胞スラブ民族にとって、独立や自由の象徴としてひとつになれるようにという願いを込めた作品です。

「残りの人生をわが同胞に奉げる」
という誓いどおり、50歳で故郷プラハに戻ったミュシャは、17年もの歳月をかけて壮大な「スラブ叙事詩」を描き上げました。

「スラヴ叙事詩」を楽しむために知っておきたい3つのポイント

《スラヴ叙事詩「スラヴ民族の賛歌」》 1926 年 プラハ市立美術館 ©Prague City Gallery

スラブ民族とは

スラブ人とはウクライナ地方にいた農耕民族ですが、中世初期に異民族の来襲などに遭い、故郷を離れます。この3世紀から6世紀頃の草創期を様子を表したのが、最初の1枚「スラブ民族の原風景」です。

画面手前に一組の男女のスラヴ人が、中央奥のアラブ風の騎馬隊の来襲から身を隠すようにして怯えています。右側にスラブ民族の司祭を剣を携えた姿で描き、両側を防衛と平和の擬人像に支えられています。これからの民族の独立へ向けた闘いと平和への願いを象徴するようです。

淡い白い光と一面の星空というミュシャ独特の幻想的な雰囲気の中で、スラブ人の困難な時代を神話的に表現しています。

スラブ語の重要性

《スラヴ叙事詩「スラヴ式典礼の導入」》 1912 年 プラハ市立美術館 ©Prague City Gallery


スラヴ人の民族大移動は、チェコだけではなくロシア、ポーランド、セルビアやクロアチアなど広い範囲へ離れ離れになりましたが、共通してスラブ祖語を元にしたスラブ系の言語を話します。宗教が異なるスラブ民族にとって、大切な共通項がスラブ語なのです。

3番目の「スラブ式典礼」は宗教式典でのスラブ言語を認める勅令を祝う様子、4番目の「ブルガリア皇帝シメオン」はスラブ文学の創始者である皇帝がスラブ語に翻訳させている様子を描き、スラブ語の大切さを強調しています。

宗教家ヤン フス

チェコ人僧職者ヤン フスは、教会改革の重要性を説き、免罪符や聖職者を批判しました。聖書が唯一の信仰の手段と主張したフスは、続く宗教改革の先駆けとなり、最後にはカトリック教会から破門され火刑に架けられました。
ミュシャはチェコの英雄フスを讃え、9番目の「ベトレヘム礼拝堂で説教するヤン フス師」をはじめ、その後の宗教戦争を10から13番目に描いています。

日本人にはあまり馴染みがないテーマもありますが、戦いや争いへの怒りや悲しみ、平和や自由の祈りや喜びなどのメッセージが自然と心に伝わってきます。

「ミュシャ展」展覧会情報

国立新美術館


場所:国立新美術館 企画展示室2E(東京 六本木)
日程:2017年3月8日(水)〜6月5日(水)
開館時間:10時〜18時 金曜日は20時まで(入室は閉館の30分前まで)
休館日:火曜日

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