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子供と一緒に見るのは恥ずかしい? 退廃とエロスを描いたクリムトの傑作「接吻」

グスタフ・クリムトの傑作「接吻」に描かれる恍惚の表情を浮かべる女性の姿。
観る人を虜にしてしまう絶対的な美しさを秘めた作品の魅力について解説します。
「接吻」している二人の関係、絵のモデルなどもご紹介しています。

世界で一番美しい官能的な「接吻」

『接吻』グスタフ・クリムト 1908年


金箔をふんだんに使用した「黄金の時代」の最盛期に描かれたのが傑作「接吻」です。
クリムト46歳の時の作品。眩い黄金を背景に、固く抱き合う男女。恍惚の表情を浮かべる女性の姿は、思わず観る人を虜にしてしまう絶対的な美しさを秘めています。
当時は絵の主題として「接吻」はタブーだったにも関わらず、出品した芸術展で人気となりました。国立オーストリア博物館が購入するという栄誉を博し、クリムトの代表作となりました。

静かな孤独を秘めた、恋人たちの熱い抱擁

愛し合っている恋人同士を描いた「接吻」。
よく見ると男女を包み込む黄金の空間はしんと静まり返っていて、絶対的な孤独という印象を受けます。男性の衣装に描かれた四角と女性の衣服の円形は、相互の補完を意味するといいます。しかし同時に恋人同士が決して分かり合うことのない「相違」を表現しているようにも見られます。
またタイトルの「接吻」とは異なり、女性の口はしっかりと閉じられています。足元に広がるお花畑も女性の足元で途切れ、あたかも崖っぷちに立っているような不安感も感じられます。
クリムトが「接吻」で描いたのは、曖昧で不確実な世界に人々を導く暗示なのです。

「接吻」のモデルは、恋人エミーリエ フレーゲ

この愛し合う男女、実はクリムト本人恋人エミーリエ フレーゲであるとも言われます。
56歳で突然の脳卒中で倒れたクリムトが、駆け付けた肉親に言った言葉が「エミーリエを呼んでくれ」。
生涯愛し合いながらも、結婚という形にとらわれず愛情を貫いた2人の不安や苦悩が「接吻」に象徴されていたのでしょう。
そのために、傑作「接吻」は時間や場所を超えて人々に愛されているのです。 

クリムトはその生涯において数多くの女性像を描き、とことんまで女性の恍惚の表現にこだわった画家でした。数多くのモデルと関係を持ち、数えきれないほどの恋人がいたと言われるクリムトは、生涯独身のままエロスに満ちた女性像を描き続けました。

クリムトの生涯の恋人エミーリエの正体とは…

グスタフ・クリムト


女性の噂の絶えなかったクリムトですが、生涯愛し続けたと言われる女性エミーリエ フレーゲの存在がありました。早世したクリムトの弟エルネストの妻の妹で、当時有名なファッションデザイナーとして自立した女性でした。機知に富み芸術的センスの優れたエミーリエは、精神的に極めて繊細な芸術家であるクリムトを、生涯にわたって陰ながら支え続けたと言われてます。「エミーリエのそばにいると心が落ち着く」という表現が、唯一クリムトが友人に語った愛する女性に関する言葉だったと言います。

ウィーン象徴主義の巨匠クリムトの生涯

オーストリア・ウィーン市内


象徴主義的傾向が強まってくる35歳の時に、仲間たちと伝統的なウィーン美術家協会から脱退し、ウィーン分離派を結成し初代会長に就任します。
ビザンティン美術に魅了されていたクリムトは、黄金色を背景に華麗な文様を施した装飾性の強い作品を次々と発表し、高く評価されます。特に独自の象徴主義的な官能美は、まさしく世紀末ウィーンの退廃的な空気を象徴するものだったのです。

クリムトは50歳を迎えるころから背景に金箔が使わなくなります。
主題の人物も背景も装飾的要素が減り、写実的に描写へと変化していきます。
1918年、せめて60歳まで生きたいと常づね語っていたクリムトは、わずか55歳で死去するのです。

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