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イタリア旅行も二度目なら、絶対に見るべきコルトーナの「受胎告知」

イタリア・フィレンツェから電車で2時間ほどにある町・コルトーナ。この街にベアト・アンジェリコ(フラ・アンジェリコ)が描いた「受胎告知」の傑作が残されています。イタリア旅行が二度目の方に、絶対見てほしい作品を、現地在住のライターがご紹介します。

イタリア・フィレンツェから電車で2時間ほどのところにあるコルトーナ。この美しい街に、ベアト・アンジェリコ(フラ・アンジェリコ)が描いた「受胎告知」の傑作が残されています。街にある司教区美術館は、小規模ながら中世からバロックにかけての傑作が所蔵されています。その中でも、ベアト・アンジェリコの「受胎告知」の美しさを見に、多くのファンがこの街を訪れるのです。

画面から清らかさがこぼれ出るようなベアト・アンジェリコが描いた数々の「受胎告知」

サン・マルコ教会

「天使のような僧」という意のベアト・アンジェリコは、30代から40代にかけて数々の「受胎告知」をテーマとした作品を残しています。これらの作品は、スペインのプラド美術館、コルトーナの司教区美術館、サン・ジョヴァンニ・ヴァルダルノのサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会、そしてフィレンツェのサン・マルコ修道院に残されています。
いずれも清浄な僧が描いたにふさわしい、清々しい画風が特徴です。

画家にして「福者」

日本では「フラ・アンジェリコ」という名のほうが通りがいいベアト・アンジェリコは、俗名や僧名よりも「天使のような僧」というあだ名のほうが歴史に残った徳の篤い人でした。その人柄を嘉して、1982年にローマ法王ヨハネ・パウロ二世は彼を福者に列しています。

フィレンツェ、サン・マルコ修道院のフレスコ画

ベアト・アンジェリコ『マエスタ』(1437年 – 1446年頃)サン・マルコ美術館(フィレンツェ)

画業とともに僧職も真面目に勤めていたベアト・アンジェリコは、壮年期にフィエーゾレという街に赴任をしていたため多忙で、フィレンツェのメディチ家の依頼にもなかなか応えられないでいました。
40代半ばを迎えようとしていた1440年、メディチ家のコジモはしびれを切らしてベアト・アンジェリコを、改装が始まっていたサン・マルコ教会と修道院内の装飾責任者に任命しました。ベアト・アンジェリコは、1445年までこのフレスコ画の制作に没頭します。
サン・マルコ修道院には、聖人やイエス・キリストをテーマにしたベアト・アンジェリコのフレスコ画が20作近く残されているのです。

サン・マルコ修道院の「受胎告知」

ベアト・アンジェリコ『受胎告知』ディオチェザーノ美術館(コルトーナ)

冒頭で紹介した「受胎告知」はその一枚です。ベアト・アンジェリコが40代後半に描いたこの「受胎告知」は、ほかの作品と違い聖母マリアと大天使ガブリエルという二人の主役の衣装の簡素さが目を引きます。遠近法によって作られた空間に、バランスよく描かれた二人の敬虔な表情が、それ故に引き立つ印象的な作品です。

ベアト・アンジェリコのファンに人気のサン・マルコ修道院のフレスコ画

自身も聖職者であったベアト・アンジェリコは、宗教画に関しても造詣が深く、サン・マルコ修道院に残されたフレスコ画はいずれも同業であった聖職者のために心を込めて描かれています。僧たちが神と自分に向き合う瞑想を行う小部屋に、それぞれのフレスコ画が描かれているのです。近代的で大胆な構図でありながら、優しい色彩が特徴のこれらのフレスコ画は、ベアト・アンジェリコのファンの間でも最も人気のある作品たちです。
くだんの「受胎告知」は、現在は美術館となっているサン・マルコ修道院の2階への階段を上がってすぐのところにあり、訪問者を優しく迎えてくれます。

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